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​【パカの地方菓子】

Fruits Confits / フリュイ・コンフィ
 この地域圏全体で一番目立つ『地方菓子』です。まず、温暖な気候のためfruitsフルーツが非常に豊富であること。そして、砂糖消費の中心であり宗教的に非常に甘いものを好むアラブの文化からの影響を比較的受けやすい位置的・気候的条件にあるためです。当時の長距離移動、交易の役割を担っていたのが船であり、地中海であったことに起因すと思われます。様々な要因からこの菓子はこの地に根付いていったと考えられます。その製法は、しっかりとblanchirブランシール(湯がく)して繊維を柔らかくしたfruitsをBrix糖度36%程度のsiropシロップに浸けることから始め、日々、徐々にその糖度を上げて行き、最終的に10日から二週間ほどでBrix68%までもっていきます。ものによって崩れにくいものならばsiropと一緒に砂糖を足して、完全に溶かすために火にかけてbouillirブィイール(沸騰させる)させます。そうすることによって浸透圧の関係から徐々にfruitのなかに糖度の高いsiropが入って行く事になります。ここで重要なのは糖度は一気にあげることが出来ないということです。仮に一気に上げてしまうとsiropが非常に不安定な状態であるため、結晶化してしまいます。また、時間をかけることによりfruitの細胞がよりもろくなり、siropが浸透しやすい状態になりますし、浸透圧の関係からも微妙な差異のほうが糖分の往来がスムーズであるからだと考えられます。また、最終回ではsiropにglucose水飴などの転化糖を加える事により以後の結晶化を防ぐ方法が用いられます。これでfruits confitsは完成ですが、販売する場合には得てしてglacerグラセ(糖衣掛けする)します。fruits confitsのglacerの場合、糖度の高いsiropに潜らせて、それを乾かします。
 Calissons / カリソン
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 その発祥はAix en Provenceエクス・アン・プロヴァンスであると言われており、今でもここのものは特別d’Aixデックスと名前がついています。現在ではPACAのみならずフランス全土で見る事ができる菓子ではありますが、特徴的な楕円の菱形とその構成については統一されていると思われます。昔の文献ではamande émondée湯剥きしたアーモンドとfruits confitsとその余りのsiropを混ぜ合わせたものをbroyeurブロワイヨ(粉砕器)で擦り砕きpâteペースト状にし、それにsiropを足して鍋で炊き上げ、pain azyme(イーストの入っていないユダヤ教の伝統的なパン)の上に伸ばして固め、それを特別な型でぬき、その上にglace royal(blanc d’œuf卵白、sucre glace粉糖、jus de citronレモン汁で堅さを調整した上掛け)を塗り、乾かしたものです。最近ではamande émondéeとfruits confits(最もベーシックなものはconfit de Melonメロンの砂糖漬け)をbroyeurで擦り砕き、それをそのまま炊かずに流し、抜き、塗り、乾かしています。なので、若干フルーティーです。
Nougat Noir / ヌガー・ノワール
 PACAの少し北のMontélimarモンテリマールがNougat blanc白いヌガーで有名ですが(詳しくはMontélimar)、PACAでその『地方菓子』と分類されるのは黒いヌガーです。前者がblanc d’œuf卵白を使用し、固いながらもネチッとした食感なのに対して、こちらは特産であるmiel蜂蜜を煮詰めたもので非常に固いです。両者ともたくさんのnoix(一般的には「くるみ」の意ですが広義にはナッツ類全般をさします)が入ります(noirの場合はamandeアーモンドのみ)。固まりきる前に切りますが、ひと苦労です。
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Pâte d’Amande / パート・ダマンド
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様々なfruitsフルーツの形を模したアーモンドペーストの固まりです。多くはそのfruitsの味付けをしています。これも、fruitsが名産たる所以であると思います。
Tropézienne / トロペジエンヌ
 Côte d’Azurに位置する都市Saint Tropezサン・トロペのspécialitéですが、いまではPACAはもとより、フランス全土でみられる生菓子です。これはbriocheを円形に平べったくして上にsucre grain(粒子の大きい砂糖)をふって焼き、それを横半分にきってsirop(多くはgrand marnierグラン・マルニエ(オレンジ風味のリキュール)かkirschキルシュ(さくらんぼのリキュール)をbrix糖度20〜25%ほどのsiropで割ったもの)をimbiberアンビベ(しみ込ませる)します。そして間にはこれまたgrand manierで味付けしたcrème mousseline(crème pâtissièreカスタードクリームとcrème au beurreバタークリームを合わせたもの)をはさみます。多くは上にsucre glace粉糖をふってあります。実際のrecetteレシピは秘伝のようです。
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Navette / ナヴェット
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 Marseilleマルセイユのspécialitéとして有名な『地方菓子』ですが、Marseilleのそれと他でみられるのもとではその文化的背景から形状が違っています(詳しくはMarseille)。基本的にはその名の通りnavette「シャトル、舟形」です。biscuitクッキーというよりも種無しパン(イーストを入れていないパン、つまりは粉類と水のみ)のような感じで、それにfleur d’oranger(南仏でよく用いられるオレンジの香料)を加えて焼き上げます。
Pompe à l’Huile / ポンプ・ア・ルイユ
 主にProvenceプロヴァンスで広く見られる『地方菓子』です。briocheブリオッシュのようなパン生地ですが、油分にはbeurreバターではなく、huile d’oliveオリーブオイルを使っているのが特徴です。また、briocheよりもœuf卵も若干少ないです。なので、少し保湿性が弱いのでパサつく感じはあります。そしてNavetteと同じようにfleur d’orangerを使っている点も特徴です。必ず丸形で葉っぱのような筋がつけられています。
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Fougasse, Fougasette / フーガス,フーガセット
 主にCôte d’Azurコート・ダジュールではFougasetteの名前で売られることが多いです。他のフランス南部でもしばしば同じような菓子(名前はFougasseが多く、またFouaceフアスであったりします)があります。これは上のPompe à l’Huileと似た菓子ですが、生地はよりパン生地に近く、甘みもあまりありません。ですが、同じようにfleur d’orangerが加えられています。甘くないようで甘い香りがするので、正直好き嫌いが分かれるところだと思います。
13 Desserts / トレーズ・デセール
 PACAでNoëlクリスマスの時に伝統的に食べられるものです。最近では「なんでもあり、家によって違う」のような風潮みたいですが、基本的に入るものは定まっています。多くは上でも触れたようなPACAのspécialitéである1:「Calisson」2:「Nougat Noir」3:「Nougat Blanc」4:「Pompe à l’Huile」5・6:「Fruits Confit(多くはÉcorces d’Orange confitオレンジの皮の砂糖煮とClémentine confit小粒なみかんの様な果物の砂糖煮の二種類)」7・8:「Fruits Secs(多くは特産物であるDatte sècheナツメヤシの実とAbricot secアンズの二種類)」9:「Pâte de Fruit(Coingマルメロのもの)」。そして特に重要なのが、10・11・12・13:「Raisin sec」「Figue sèche」「Amande」「Noisette」です。これらは総称して「4 mendiants」と言われ、四つの托鉢修道会のことです。それぞれ「Raisin sec」はDominicainsドミニコ修道会、「Figue sèche」はFranciscainsフランシスコ修道会、「Amande」はCarmesカルメル修道会、「Noisette」はAugustins聖アウグスチノ修道会を意味し、その僧衣の色を表しています。この他には「Melon Confit」や「Confiture」、「Navette」などを入れる場合があります。また、合計で13種を超える場合も多くあり、その理由は誰も分かりませんでした。13種類である理由はキリストと12人の弟子達の13人による「最後の晩餐」を意味しているという話です。
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